佐橋大

B型肝炎の常識が変わってきている。従来とは異なる遺伝子型のウイルスが増え、成人期の感染でも、慢性肝炎になりやすくなっている。「完治した」と思われた人が抗がん剤などの治療後、肝炎になる危険性も知られている。 B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)が血液や体液を介し、感染して起きる。一過性感染と持続感染に分かれる。一過性の二~三割は、だるさなどの症状が一時的に出る急性肝炎に。意識障害が起き、死につながる劇症肝炎になる人もまれにいる。持続感染は一部、慢性肝炎になり、肝がんになる人も。従来は母子感染など、三歳未満で感染するとなりやすく、それ以上の年齢では性交渉などで感染しても、ほとんどが一過性の感染で終わるとされてきた。HBVには、症状の異なる九種類の遺伝子型があり、日本でもともと多い二種類(遺伝子型B、C)では、そうした傾向があるからだ。 このため国内では母子感染対策を重視。一九八六年以降、持続感染している妊婦から生まれた赤ちゃんには出生直後のワクチン接種などを実施し、母子感染は対策前の十分の一以下になったと推計されている。 ところが最近は、国際化によって、持続感染になりやすい遺伝子型Aの感染が増えている。この型は急性肝炎の症状は軽いが、三歳以上の感染でも約一割が慢性肝炎に移行する。成人間や父子間での感染拡大が懸念されている。 HBV感染について、厚生労働省は「常識的な生活を心掛けていれば、日常生活の場で感染することはほとんどない」というが、傷口のある状態では涙や唾液を介しても感染しうることが確認されている。 「治ったら肝臓からなくなると考えられていたHBVだが、実は、DNAが肝臓に残り続ける。HBVの感染は一生続く」という指摘もある。